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古明地洋哉 インタビュー <序文>

 

 

 

 tonight, tonight

 

  

 真冬の夜空の下 歩き慣れたいつもの道

 物憂げな君の横顔 月の光が照らしてた

 

 人工衛星が僕らを星の陰から見つめている

 

 tonight, tonight

 どこに隠れたらいいんだろう?

 僕らが愛し合うには

 

 少年は部屋に籠り 少女は朝まで帰らない

 世界は変わらないだろう 革命は制圧されるだろう

 

 人工衛星が僕らのアジトをじっと見張っている

 

 tonight, tonight

 どこに隠したらいいんだろう?

 大切なこの凶器/狂気を

 

 世界の裏側とだって

 すぐにでも繋がれるこの時代に

 tonight

 今、隣で眠る君のことだけがわからずに泣いた

 でもそれはきっと素敵なことだろう

 僕らがわかり合うには

 

 

 詞・曲 古明地洋哉 

 ©Hiroya Komeiji

 

 

 

 

 

(追記)“tonight, tonight”(home recording demo)

 

    YOUTUBEにて公開しました。上の画像からご覧下さい。


 

 

 

 

 

「ようやく、つくろうという気になった」

 

 

 

彼のライブに足を運んでいる長年のファンの方はご存知だろう。未だ音源化されていない彼の歌の数々がいかに素晴しいものばかりであるか。そして彼がどれだけの年月をかけて、それらのメロディー、詞、ギターのフレーズを磨きあげているか。

 

 

 

古明地洋哉が本当に久しぶりに自身の作品としてリリースした楽曲が「tonight, tonight」である。

シンプルなアコースティック・ギターのストロークで語られる日常の静かな夜と、その裏で実は存在する大いなる危うさ。僕と君と世界の距離は一瞬にして近づき、遠ざかる。知ろうとすればどんなに離れた国の窓まで覗ける現代で、面前の大切な人ともわかりあえないというディスコミュニケーション。でもそれは素晴しいことだろうとつぶやき、あきらめでも希望でもなく、問いかけという余韻を残して歌は終る。アウトロに重ねられたエレクトリック・ギターのシンプルなフレーズが儚い星の瞬きのようでもある。美しい曲だ。

 

 

 

結果的にメジャー最後のシングルとなった『空砲 / 世界の果て』をリリースしたのが2005年。今から実に12年前である。それからの決して短くない期間、古明地洋哉はいっさいの音源作製をせず、1本のギターを抱えた弾き語りのライブを精力的に行っていた。

 

 

 

「事務所を離れてまず思ったのは、もっとライブやっとけばよかったなと」

 

 

 

「メジャーにいたときはバンドのサポートありのライブだったし、方針もあってそんなに本数もやらなかったんだけど、ひとりになって、とにかくライブをやろうと思った。シンガーソングライターを名乗るなら、パフォーマンスを上げて、ひとりでステージに立てる自分になることから始めないと」

 

 

 

それから2017年の現在に至るまで、彼の活動のほぼすべては弾き語りのライブである。

阿佐ヶ谷駅にほど近いアコースティックライブバーharness(ハーネス)で、数年前から始めた月イチワンマンは昨年中に50回目を数えた。会場も今では彼のホームグラウンドとなっている。

時おりイベント出演やシンガー仲間との各地でのツアーをはさみながら、研鑽を重ねたソロのステージ。新しい曲をつくり、既存の曲をストイックに磨き上げ、好きなアーティストのカバーを自作と思えるまで消化し、練り上げる。それだけをやり続け、気がつけば10年の時をはるかに越えていた。

 

 

 

ライブをやっていれば当然、ファンや会場側から音源を求められたこともあっただろう。好きなアーティストの新しい曲を手にしたいという欲求は確実にあるからだ。古明地は、だが、それについて全く考えなかったという。

 

 

 

「天の邪鬼だからね。新曲はライブに来なきゃ聴けないってアーティストがいてもいいので」

 

 

 

客席から嘆きの声とため息が聞こえるようである。

 

 

 

状況が変わったのは2014年の真夏のこと。

四日市在住のシンガー、胡池マキコとのスプリット盤が、ふたりのツアー会場限定販売としてリリースされた。

突然のことに、ファンは喜ぶというより驚いたのではないか。

 

 

 

「マキコちゃんにつくりませんかって言われて。ツアーをいっしょに回ろうとしてたし、ああ、つくろうかって、そのときは自然に思えた」

 

 

 

そうしたいと思ったから言ってみた。彼女にとってはただそれだけのことだったかもしれないが、何しろ胡池女史のファインプレイである。タイミングというものがどれだけ大事であることか。

 

 

 

古明地洋哉 胡池マキコ名義の『ふたつの月 ひとつの夜』は4曲入りで、そのうち2曲はお互いの曲のカバー、あと2曲がそれぞれの未発表音源という構成。

胡池が歌う古明地の楽曲「青空、赤い花」に始まり、古明地による胡池楽曲「wonderland」、胡池自身が歌うオリジナル曲「月の管理人」、そしてラストに収録されているのがテキスト冒頭の「tonight, tonight」である。

半分がカバー、さらに短い収録時間ながら、そのすべてが美しく、タイトル、曲順、ジャケットも含めて、ひとつの世界を表現した完璧なパッケージだと筆者は思っている。

「青空、赤い花」について、とある女優兼シンガーが歌うことになっていたかもしれないというのは余談である。

 

 

 

この作品はMTRによって記録された。四日市のライブハウスの楽屋、そしてわずかなダビングを東京の自宅で。エリオット・スミスを思わせるいい意味でラフで素朴なその音像に、彼は確かな手応えを感じたらしく、それまでライブで磨き続けて来た数々の曲をまとめ、音源としてリリースすることを決めた。

 

 

 

「スプリット盤の作業、やってて楽しかったからね。ようやくそういう気になった」

 

 

 

今年リリースされるならば、実に12年ぶりの新作ということになる。ちなみに「tonight, tonight」「青空、赤い花」が収録されるかは未定である。

 

 

 

2017年1月現在、候補曲のブラッシュアップ等、準備はほぼできているというが、実際のレコーディング作業はまだ始まっておらず、本人の弁によればふさわしい場所を探しているとのこと。

希望は、機材をセッティングしたまま数日間生活し、作業だけに集中できる場所。

かつて彼が敬愛するクリス・ウィートリーは住居の浴室のリバーブを利用して1枚のアルバムをつくったとされるが、それに倣うでもなく、また当然のように、正規のスタジオでとも考えていないらしい。

 

 

 

「場所さえ見つかれば、いますぐにでもレコーディングしたいんだけどね」

 

 

 

そうは言いながら、ライブやツアーのスケジュールは埋まっていく。それが活動の中心であることは変わらないからだ。彼が納得できるもうひとつの居場所が、できるだけ近々に(時間の経過的にも、物理的距離にしても)見つかるのを、このテキストを読んでくれたファンと共に願うばかりだ。

 

 

 

 

2016年、晩秋。新宿のうるさい居酒屋にて。

 

 

 

Text by 大塚茂之(BRAVE SONG/ カフェソードフィッシュ)

 

※歌詞に関しては作者に許可を得て特別に掲載しております。

 転載・無断使用はご遠慮ください。

 

 

 

古明地洋哉さんの新作は、ソードフィッシュONLINE STORE にてお取り扱い予定です。

 

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