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対談 浅田弘幸×大森暁生(6)

 

 

 

 

 

浅田弘幸×大森暁生トークライブ at D.B.Factory

花の咲く場所 -Flowers Always Bloom Somewhere-

 

 

 

 

 

去る2017年5月4日に開催した、

漫画家・浅田弘幸さんと、彫刻家・大森暁生さんのトークイベントの模様を

全10回にわたってリポートします。

 

司会・テキスト 大塚茂之(Cafe Swordfish)

 

写真 縣 ケンジ/ AGATA Kenji ※記事中、表記のないものすべて

 

 

 

 

 

 

 

第6回 うみんちゅ君

 

 

 


今回のトークの中でもハイライトのひとつだったのが、この「うみんちゅ君」のお話。

当日、会場にも設置されていた「光たちの肖像」と名付けられた動物愛護センターに保護されている犬や猫の作品群は、大森さんのアーカイヴにおいて異質な存在として知られ、個展で発表された当時の衝撃たるや一目見て落涙する人もいたほどでしたが、作者本人が語る事実にはまた違った側面があったのです。

 

 

(補足的に、大森さんのコラム「PLEASE DO DISTURB」から抜粋させてもらった文章を交えてお届けします)

 

 

 

 

 

 

 

□ □ □ □ □ □

 


【浅田】
大森さんて、何を込めて彫刻を作っているんですか? 例えば、この子には何を込めて?

 

 

 

 

 

(浅田さんの後方に展示されていた「光たちの肖像」という作品)

 

 

 

 


【大森】
この2点の作品は自分の中ではちょっと特殊で。
それこそ、こういう(ロゴマークの)ツノの生えた狼なんかは自分の中の私小説を普遍化したファンタジーだったりする部分もあるんですけど、同じ動物でも、これはもろ、ドキュメントなんですね。
熊本県にある「熊本市動物愛護センター」というところを取材して、そこに保護されていた犬を作りました。

 

 

 

 


動物愛護センターという施設は、迷い犬猫、遺棄、そして飼育放棄により持ち込まれた犬や猫を引き取り、譲渡先を見つける世話をしたり、場合によっては殺処分を行う場所。しかしながら、一般的にはやはり殺処分場としてのイメージが強く、各自治体にこのセンターはあるものの、その多くは実際、殺処分場そのものと言っても過言ではないだろう。この国では年間30数万頭の犬や猫が殺処分されている、という事実からもそれは明白だ。


大森暁生コラム「PLEASE DO DISTURB」2011.06.21 「熊本市動物愛護センター」より抜粋

 

 

 

 

(筆者・追記)
大森さんが彫刻だけで生計を立るようになる以前、美術の授業を受け持っていた動物専門学校の講師から、ペット業界をはじめとした動物にまつわる闇を聞いたことがあった。愛護センターと呼ばれている施設が実際には殺処分を行なっているということへの違和感。ずっと引きずったままだったその気持ちにケリをつけるべく、氏は思い立って各地の愛護センターに取材を申し込んだ。そこに保護されている犬や猫を作品にすることを前提として。

 

 

 

 

 

 

【大森】

動物愛護センターというものは各都道府県にあって。身近な東京、神奈川、千葉あたりから調べて問い合わせたんですけど、軒並み取材NGで。なおかつ、それを日本橋の三越本店での個展で発表したいんだと伝えると、ますますそんなのOKが出るわけがなくて。そこで働いている職員の方が別に悪いわけじゃないんだけど、その人たちが悪者に見えてしまうような取材ですから、受けてくれるわけがないんです。

そうしているうちに、ある方から「熊本の愛護センターは殺処分0を目指す活動をしているんで、そこに問い合わせてみたらどう?」っていうアドバイスをいただいて。
それで電話しましたら、あっさり「あ、どうぞ」みたいな感じで、拍子抜けするくらい。それで取材させていだたいたんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一般的な愛護センターでは約1週間と聞いていたけれども、実際には4日目には所有権が無くなるらしく、つまりそこから先は誰かに譲るにしても、保護飼育するにしても、殺処分するにしても、それは各愛護センターの判断という事だ。実際、他の愛護センターでは収容頭数の都合上、4日目で殺処分される例も少なくないそうだ。
そんな中、ここ熊本市動物愛護センターでは、なんと長いものでは2年以上も保護飼育されている犬まで居るという。

 

 

前述の同コラムより抜粋

 

 

 

 

(筆者・追記)

熊本市動物愛護センターはその取り組みにより、殺処分0に限りなく近い実績を上げている。
一般的な処分に使われるガス室を、ボンベを撤去することで一切稼働できない状態にしてあるのがその意思表示だろう。
ただ、保護された段階で治る見込みのない病気に罹患していたり、譲渡や飼育が不可能なほどの凶暴性を持っている場合は麻酔薬による安楽死を施されることがある。麻酔薬の使用はガス室に比べて限りなく苦痛が少ない手法とされるが、年に数頭、そのようなケースがあることも現実である。
飼育が長期になればなるほどその費用が必要となるが、行政である熊本市の理解による予算枠や、個人からの寄付などのバックアップによってサポートされている。

 

 

 

 

 

 

【大森】
これは誤解してほしくないんですが、これらの作品は動物愛護団体的なこととか、慈善活動的なことではないんです。

僕はあまり、その子たちをかわいそうでかわいそうでしょうがないとか、もちろん、そういう気持ちがない訳ではないんですが、それだけが動機という訳でもなくて。

 


同じ犬や猫なのに、彼らは近所の犬や猫とは違う顔をしているんですよね。

皮肉な話なんですけど、単純に作りたい顔をしているんです。

作家としての意欲を刺激される、悪い言い方をすると下心的な部分も大きいので、あんまりその「いいことしているね」って言われても「そうじゃないんだけど」って。

 


ただ、こういう仕事(彫刻家)って、どこまでいっても、お医者さんとか消防士さんとか、世の中に不可欠な仕事をしてる人には頭が上がらない部分が自分の中にあってですね。まあ、その言い訳じゃないんですけど、自分の作家活動の中に、ひとつぐらい、そういうの(社会的に意味があると思えるもの)があってもいいんじゃないかと。

 

 

 

 

 

【司会】
発表された当時も拝見しましたが、ものすごく考えさせられる作品でした。
発表から随分経った今でも、その目、その表情が心に残っています。命を持った作品の持つ力というか。

 

 

 

 


【大森】
ありがとうございます。 この企画の展覧会は、観てくださった方の反応も、自分の当初の企画も、取材も、作っている時の気持ちもトータルで、こういうのが自分が思っていた「表現」なのかなって、今までで一番思える仕事でしたね。

 

 

 

 

 

 

 

□ □ □ □ □ □

 

 

【大森】
ここに行って面白かったのは、行く前はどんな気持ちになるんだろって思っていて、逆に何にも思わなかったらやる意味はないし、行ってすごく暗い気持ちになるのかなって。

 


そしたらすごく明るいんですよ、ここ。また行きたくなるような。
悲壮感とか重い仕事をしている感じがなくて。もちろん、だからこそ、そうされているんでしょうけど、表向きはすごく明るくて、空気がすごくいいんですよ。ちょっと意外なくらい。

 

 

 



【浅田】
え、まって。この作品の中には、その「いい空気」を込めているってことですか。

 

 

 

 

 

【大森】
そうです。だから割とこう、明るい作品だと思っているんで。

 

 

 

 


【浅田】
明るい作品!?

 

 

 

 


【司会】
ええー!!

 

 

 

 


【大森】
いや、そこで働かれている職員の方が、親しみを込めて名前をつけるんですね、保護されている犬や猫たちに。

 

 

この子はね、うみんちゅ。うみんちゅ君。

片目をずっとつぶってんなと思ってたら潰れてたんですけど、犬なのに猫背なんです。猫背でずっとこうやって見てるんです。
いまだに何故「うみんちゅ」なのかはわからないんですが(笑)

僕が取材させてもらった1ヶ月後ぐらいにね、引き取り手が決まったんですって。

 

 

 

 


【司会】
おお、それはよかった!

 

 

 

 


【大森】
決まったんですけど、逃げ出しちゃったんです(笑)

 

 

 

 

 

【客席】

(笑)

 

 

 

 

 

【司会】
うみんちゅが(笑)

 

 

 

 

 

【大森】
ええ、うみんちゅが(笑)

 

 

で、ある家からセンターに通報があって、見知らぬ犬が毎日家に来るんだと。
その特徴を聞くと、どうも、うみんちゅらしいと。

そしたら、その家にはすごいかわいいメス犬がいるんですって。
そこに毎晩、うみんちゅが来て(笑)

 

 

 

 

 

【客席】

(クスクス笑い)

 

 

 

 

 

【大森】

保護しなきゃいけないから、罠として檻を置いて、その中に餌を置いていても、なかなか入ってこない。

で、その雌犬のオムツ、そういうのがあるんですね犬用のオムツ。
それを置いといたら、うみんちゅが、

 

 

 

 

 

【司会】
あの、大森さん、大丈夫ですか、この話?(笑)

 

 

 

 


【大森】
一発で罠にかかったという。

 

 

 

 

【客席】

(笑)

 

 

 


【大森】
そのエピソードを所員の方が楽しそうに話してくれるんです(笑)
(大森さんもやたら楽しそう)

 

 

 


【司会】
それを聞いた後だと、作品の見え方が違ってきますね(苦笑)

 

 

 


【浅田】
それ、どうなの。聞いた方がよかったのか、聞かない方がよかったのか(笑)

 

 

 

 

【大森】
保護されたうみんちゅ君、またしばらく猫背になってたらしいです(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

□ □ □ □ □ □

 


シリアスなムードから思いもしない方向に逸脱していったエピソード。司会者の困惑はさておき、結果的に大森さんがこの作品で本当に伝えたかったところに着地してもらえたのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

ここでトーク前半部分が終了し、いったん休憩になったんですが、大きな笑いに包まれた会場の余韻の中で、作品名の中の「光」というポジティヴな言葉の意味が、ようやくわかった気がしました。
彼らは決して悲観的な存在ではなかったのです。

 

 

 

 

 

「僕の話かい?」

 

 

 

 

 

 

熊本地震で被災した同センターのサポートを行った大森さん。1年が経過し、その後を記録した個展を、今年の8月中旬、日本橋三越本店にて開催予定です。
ご興味がある方は是非今後のオフィシャルサイトなどをチェックしてください。

 

 

 

大森暁生 オフィシャルサイト

 


大森暁生コラム「PLEASE DO DISTURB」

2011.06.21 「熊本市動物愛護センター」全文
 

 

BRAVE SONG WEB JOUNAL「その日を待つ命」
 

 


 

 


次回よりトーク後半戦。
多くの共通点を持つお二人ですが、それぞれが歩まれた道に関して、大きく異なっている点が明らかになっていきます。

 

 

 

続きます。

 

 

 

 

 

目次

 

 第1回 黒い壁の中へようこそ(5/17 UP)

 第2回 義眼神父と火の頭蓋(5/22 UP)

 第3回 コラボレーションはトレードマークで(5/26 UP)

 第4回 アシスタント制と工房制(6/4 UP)

 第5回 やりたくない仕事はありますか?(6/6 UP)

 第6回 うみんちゅ君(6/7 UP)

 第7回 まんが道とはぐれ刑事純情派(6/10 UP)

 第8回 上村一夫さん(6/20 UP)

 第9回 浅田さんと大森さんに訊いてみたいこと(6/20 UP)

第10回 少し先の未来(6/20 UP)

 

全10回を公開しました。

 

 

 

 

 

 

浅田弘幸×大森暁生×Cafe Swordfish

スペシャルコラボアイテムのご注文はこちら

 

延長後のオーダー締切は

6月25日(日)夜10時まで

とさせていただきます。

よろしくお願いいたします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅田弘幸 / HIROYUKI ASADA
漫画家。1968年神奈川県横浜市生まれ、鎌倉市在住。1986年に集英社月刊少年ジャンプでデビュー。
代表作に「眠兎」「蓮華」「I’ll」「テガミバチ」。アニメのキャラクター原案や、イラストレーターとしても活動中。
筋肉少女帯のCDジャケットや宮沢賢治作品、中原中也詩集の表紙など手掛けている。

https://twitter.com/asadercover

 

 

 

                                   Photo by Nojyo

 

 

大森暁生 / AKIO OHMORI

東京都出身 愛知県立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業。
彫刻家 籔内佐斗司氏のアシスタントを経て独立。氏

国内外のギャラリー、百貨店、アートフェア、美術館等での個展や展示に加え、
多くのファッションブランドとのコラボレーションなど幅広く作品を発表。
フォトエッセイ+作品集「PLEASE DO DISTURB」(芸術新聞社)、
大森暁生作品集「月痕 つきあと」(マリア書房)を刊行。

akioohmori.com

 

 

 

      

                                ©️HIROYUKI ASADA, Cafe Swordfish

 

 

カフェソードフィッシュ / Cafe Swordfish
とある街の5街建てビルの屋上にあるという架空のカフェ、ソードフィッシュ。
その物語をモチーフに、様々なジャンルのクリエイターが創作活動を行う、コンテンツサイト&オンラインストア。

cafeswordfish.com

 

 

 

 

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